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シャイニーストッキング

第11章 絡まるストッキング10     連休最後の2日間…

 19 美冴と健太(1)

「もしもし…
 わたしです、美冴です…」

 8月15日午後4時…
 わたしは武石健太に電話した。

「あっ、は、はい、み、美冴さんっ」
 思わず携帯電話から耳を離してしまうくらいに健太は、電話口で大きな声で返事をしてくる。

「あ、もう、そんな大きな声出してぇ」
 
「え、あ、い、いや、すいません、でも嬉しくてぇ…
 つい…」
 それはそうかもしれない…
 だって彼とは10日の夕方以来の約5日振りなのだから。

 そして心なしか…
 わたしの心も高鳴っていた。

「うん、そうよね、5日振りだもんね」

「あ、はい、でも、明日じゃ…」

 そう一昨日のメールでは明日、つまり16日の夜に…
 と告げていた。

「うん、急にね、予定変更になってね、お友達とは今日の午後にお別れしたのよ」

 そう、リアルという現実が…
『夢の国』の魔法を解いてしまったのである。

「えっ、じ、じゃあ」

「うん、空きましたけど?」
 わたしは少し勿体付けて言う。

「あっ、う、うわっ、ま、マジっすかぁ…」

「うん、そう、マジっす…」

「あ、ああ、じゃ、じゃあ、逢いたいっす、今すぐにでも美冴さんに逢いたいです」
 再び健太は、大きな声でそう言ってきた。

 いや、叫びに近かった…

「うふ、も、もう健ちゃんたらぁ…
 逃げないからぁ、そんな叫ばないの」

「あ、はい、すいません…
 つい、興奮しちゃって…」

 その時わたしは、つい、スッと彼を…
『健ちゃん』と、呼んだ事に気付いたのだ。

 あ…

「じ、しゃあ、今すぐにでも…」

 だが、彼は興奮マックスで、そんな事には気付いていないみたいである…

 ま、いいか、なんか、ずうっとゆかりさんと一緒にいたから、心が緩やかに、穏やかになっているみたい…
 わたしはそう想い、心のままに任せる事にした。

 だって、この前からはずうっと心の中では…
 『健ちゃん』て呼んでいたのだから。

「じゃあ、行くね、すぐでいいの?」

「あっ、は、はいっ、すぐにでも逢いたいです」

「うん…」

 わたしも…

 そう最後に言って電話を切った。

 わたしだって…

 健太、いや、健ちゃんに今すぐにでも逢いたい…




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