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シャイニーストッキング

第11章 絡まるストッキング10     連休最後の2日間…

 43 ゆかりと大原本部長(5)

「あ、ら、なんか…シャネルの香りが…」

 えっ…
 すると突然、呟いてきた。

 ドキンっ…

 心が一気に高鳴り、そして凍りつく…

「………」
 ゆかりがジッと目を見つめてくる。

 だが…

 このお盆休みの前半はゆかりとは嘘の会話の電話をし…

 そして元彼女のきよっぺとノンの二人の間をうまく泳ぎ、ダメ押しに突然の松下律子という銀座のクラブのホステスであり、大切な存在の一人となってしまった彼女の突然の来訪によって…

 嘘が…

 咄嗟のウソが…

 上手くつける様になった…のかもしれない。

「え、あ、いや、新幹線の隣に座っていたお姉さんの香りが付いちゃったのかなぁ…」
 
「え…」
 
 するとゆかりがクンともう一度私の胸元の匂いを嗅ぎ…

「あ、ごめんなさい、そんな感じね…
 なんか、プン…と、シャネルの、あのいつもの銀座のお姉さんの香りがした様な感じがしたから…つい…」
 そう言いながら微笑んできたのだ。

「それに、いつもの香りは18番だけど…
 これは19番だし…」

 私にはちんぷんかんぷんなのだが…
 とりあえず、疑惑は消えたようである。

 それに今日、確かに、律子と一緒に日光観光には行ったのだが、直接のカラダ同士の触れ合いは無かったし、しかも夕方、律子と別れてから着替えもしたから万が一の律子の香りが残っている筈が無い…
 そう思うのだが。

 とりあえず乗り越えられた…

「ごめんなさい…ね」
 するとゆかりが謝ってきた。

「いや、謝るほどじゃないさ」
 だが、少しだけ違和感を感じていた。

 ゆかりの嫉妬なのか?…

 いや、それは…

 まさか、ゆかりに限っては…

 いつも銀座の女と一笑に付していたはずだが…

「ここ暫く寂し過ぎちゃったからつい…」
 
 だが…

 そう囁いてきたそのゆかりの声音と仕草に…
 私の心が一撃されてしまったのだ。

「えっ…」

 な、なんて声音だ…

 なんて…

 今までこんな感じで甘えてきたことなんて無かったのに…

「あ、す、すまん、とりあえず早く部屋に行こう」
 私は思わずそう言いながら、エレベーターに乗る。

 そして、すかさず抱き寄せ…

「あ…ん…」
 キスをした。

 久しぶりのゆかりとのキスは…

 そのキスは…

 甘かった…





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