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　57　ゆかりと大原本部長（19）

「あ、それよりさぁ…
　ひ、久しぶりの田舎はどうだったの？…
　それにお母様の御容態は？…」
　話題を変える為にわたしは話しを逸らす。

　とにかく料理の話題から逃げたかったのだ…

「あ、うん…」
　すると浩一さんは少しドキッとしたような顔を一瞬したのだが…

「あ、うん、お袋は…」

　どうやらお母様は絶対安静ながらも、殆ど心配は無く、とりあえずは二週間位入院で大丈夫らしい…

　そして久しぶりの帰省だったので懐かしい友達や、甥っ子、姪っ子とも交流できてのんびりできた…
　と、語ってきた。

　だが、わたしは彼の一瞬の動揺の表情を見逃しはしなかったのだ…

「ふうん、そうなんだぁ、懐かしいお友達やぁ…
　元彼女なんかとも再会できたんですねぇ？…」

　これは嫌味では無く、軽い揶揄いのつもりでの言葉であったのだが…

「あ、う、い、いや、うん、それは…」
　と、面白い位に慌て、動揺をしてきたのである。

「あらぁ、なんかぁ、あったんですかぁ？」
　わざとツッコむ。

「え、い、いや、無いよ、話しはしたけど何も無いから…」
　必死な顔でそう言ってくる。

「うふ、そんなに慌てなくてもぉ…
　そんなぁ疑ったりはしてませんからぁ…」
　本当に揶揄いの言葉であるのだ。

　それに深くツッコむつもりも毛頭無い…

「あ、う、うん、揶揄うのは辞めてくれよ…
　確かに会ったが、他にも同級生とか一緒だったし…」

「うふ、ごめんなさい…
　ついね、なんとなくね、揶揄いたくなってしまって…」
　彼は面白い様に動揺し、必死な表情で慌てていた。

　そして、そう、本気で疑ったりとかはしてはいない…

「ふぅぅ、本当、揶揄うのは勘弁してくれよぉ」
　そう、安心した声音で呟いてくる。

　仮に、本当に、元彼女となにかしらあったとしても、わたしは構わない…

　だって…

　彼、浩一さんがわたしを本当に…

　本気で愛してくれて…

　そして、大切にしてくれている事は…

　間違いなく分かっているし…

　実感もしているから…

「うん、ごめんなさいね…
　つい、面白くて…」


　そう、本当に、面白い様に反応してくるから…
　つい、揶揄いたくなってしまうのだ。