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シャイニーストッキング

第11章 絡まるストッキング10     連休最後の2日間…

 60 ゆかりと大原本部長(22)

 テレビなんて観るのは本当に久しぶりであったし、どうやらゆかりもそうらしかった。

「テレビ観るのチョー久しぶりだわぁ」

「うん私もだよ…」

 そうここ三カ月はお互いに多忙であり、帰宅も毎日の様に遅いし…
 私の場合は山崎専務から頻繁に銀座のお誘いもあったから、自宅はほぼ寝るだけであった。

 いや多分にゆかりも似た様な生活である筈だろう…

「ねぇ家政婦さんて週何回頼んでるの?」
 すると突然、訊いてきた。

「うん週三回かな、確か月、水、金曜日に…」

「そうかぁ、だからいつもこんなにきれいなんだね」

「うん、とりあえずは掃除、洗濯を頼んであるからなぁ」

「わたしも頼もうかなぁ、最近、掃除、洗濯もままならなくてさぁ」

 確かにそうかもしれない…

 新規事業プロジェクト…

 そして従来のコールセンター業務の新規案件等々…

 ゆかりの仕事はどんどん多忙になってきていたし…
 これからはもっとハードになっていく筈であるから。

「いいんじゃないかなぁ、実際、楽だしね」

 そうなのだ、食事は外で済ませられるが、なかなか掃除、洗濯はままならないから…

「そうよねぇ…」
 そうゆかりは周りを見回しながら呟いてくる。

「それにさぁ、あのマンションもさぁ、一人には広過ぎでさぁ」

「ま、3LDKは一人には広過ぎるな」

「でしょう…」

「一緒に住むか?」

「え?」

 私は、つい、そう言ってしまった…
 
 だが、本気でもある…

 このゆかりとなら…

「ほ、本気なの?」

「あ、うん…」

 私達は見つめ合う…

「あ、あぁ、嬉しいけど…」
 するとゆかりは目を逸らし、そう呟いてきた。

「嬉しいけど?…」

 なんだ?…

「まだ、早いかなぁ」

「まだ?」

「うん、早いかなぁ」

 早いのか?…

 もう二年も付き合っているのにか?…

「時期尚早かな、あ、いや、時期が悪いかなぁ…」

「え、時期が?」

「うん、せめて、わたしの新規事業プロジェクトが落ち着かないと…」

「あ、うん…」

 確かにそうかもしれない…

「プロジェクトが完全に軌道に乗らないとさぁ…」

 浩一さんの、いや、大原本部長の尻馬の、七光りに見られちゃうから…

「あ、そうか、そうだな…」

 確かに、そうかもしれない…



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