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シャイニーストッキング

第11章 絡まるストッキング10     連休最後の2日間…

 62 ゆかりと大原本部長(24)

「それにさぁ、あのマンションもさぁ、一人には広過ぎでさぁ」
 わたしはつい、そう呟く…

「ま、3LDKは一人には広過ぎるな」

「でしょう…」

 すると、浩一さんがスッとわたしの顔を見て…

「一緒に住むか?」

 そう言ってきたのだ。

「え?」

 わたしはドキッとしてしまう…

 そして…

「ほ、本気なの?」
 思わず、そう聞き返してしまう。

「あ、うん…」

 すると彼は頷き、わたし達は見つめ合う…

「あ、あぁ、嬉しいけど…」
 だけどわたしは目を逸らし、そう呟いた。

「嬉しいけど?…」

 そう、嬉しいけれど…

「まだ、早いかなぁ」

「まだ?」

「うん、早いかなぁ」

 そんな簡単な問題ではないのだ…

 もう二年も付き合っているのだが、わたしと彼とは普通の男女の…
 いや、上司と部下の恋愛関係では無いのである。

「時期尚早かな、あ、いや、時期が悪いかなぁ…」

「え、時期が?」

「うん、せめて、わたしの新規事業プロジェクトが落ち着かないと…」

「あ、うん…」
 そうわたしが言うと、彼は納得した表情を見せ、頷いた。

「プロジェクトが完全に軌道に乗らないとさぁ…
 浩一さんの、いや、大原本部長の尻馬に、七光りに見られちゃうから…」

「あ、そうか、そうだな…」

 そうなのである…
 わたしは普通の部下のOLとかではなく…

『新規プロジェクト計画準備室室長』と
『コールセンター事業部部長』
 という、おそらくは同期の全てをゴボウ抜きしてしまったくらいの出世のポジションを任された…
 同じくゴボウ抜き的な出世をし続けている大原本部長の部下なのである。

 そしてわたしは実力半分、彼、大原本部長としての影響半分と自覚はしている…

 だが、本当に、ここ最近の事例を鑑みても、このわたしの出世は…
 異例の、大抜擢に近いのだ。

 だがらここで、安易な噂や中傷の類を刺激したくはない…
 それにただでさえ、既に陰では色々と騒いでいる輩が少なくはないのも分かってはいる。

 だからこんなプライベートな問題でも…
 ハッキリとした成功の結果を出さなくてはいけない。

 そして、それが彼として、大原本部長としての存在感を更に高める事にも通じていくのである…
 だからこそ、今は迂闊な動きは厳禁なのだ。



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