でも、猫系彼氏に振り回されたい
第1章 ツンデレじゃないもん
「…俺と行きたかったから、帰ってきたの?」
「んなわけないじゃん。ごちそうさま」
俺は湊の耳が赤くなったのを見逃さないし、だからってあえて口に出したりもしない。ただ心の中で愛でるだけ。
ごちそうさま、といいつつも無言で俺が食べるのを見ている。目を合わせると目を逸らし、時計を見るふりをする。可愛いやつめ。
「ごちそうさまでした」
少し遅れて俺も食べ終わると、湊がすっと立ち上がってお皿をさげた。
「あ、ありがとう。いいよ俺するから」
「ううん、洗い物したい気分だし」
「ありがとう。じゃあ俺も一緒にする」
役割分担すれば仕事も早い。
なんだかんだ器用な湊は、手際よく食器を洗ってくれる。料理はほとんどしないくせに。
「湊はさ、こうやって手伝ってくれたり、ツンデレだよね〜、カワイイカワイイ」
まだ少し濡れた手で頭をわしゃわしゃしようとしたら、手を跳ね除けられた。
「なに?やだ。ツンデレじゃないし。勘違いすんなばーか!」
にーっと笑う湊があまりにも輝かしくて爽やかで、湊の周りに、青春じみたCMみたいに、リアルに水飛沫が見える!と思った時には俺の顔が濡れていた。
へへっ、と得意げに笑う湊に、水をかけられたみたいだ。