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でも、猫系彼氏に振り回されたい

第1章 ツンデレじゃないもん


「もう、最悪〜!」
水がかかる寸前の、水飛沫の奥に見える笑顔の湊が頭にこびりついて、夏を感じた。

「じゃ、おやすみ。俺はまた寝るねー」
クルッと身軽に振り向いた湊は、気だるそうにそう言い残して、ベッドにダイブする。

俺も顔をさっと拭いて湊のほうへ行く。
今日は久しぶりの休み。俺は2人で住む家の近くの小さな喫茶店で働いている。最近は従業員が突然1人抜けてしまい、働き詰めだった。

湊は猫みたいなもので、ご飯を食べてよく寝て放浪するのが仕事。とはいえ、実は実家が太くて、この2人で住むには広いマンションの一室も、父親から譲り受けたものらしい。
何かの会社の社長である父親の業務を軽く手伝うだけで、普通のサラリーマンがもらうようなお金を貰い、湊はさらに放浪しながら絵を描いて小銭を稼いでいる。

「凌くん。おいで」
こうして急に主導権を握るのも、実際俺を養っているのも、実は湊なのだ。

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