夢魔
第4章 漆黒の世界
闇の様な漆黒の瞳が彼女を見下ろし揺れていた。
「ミーシャ……ああ、凄い。 母さんよりも」
刹那のあとに彼女の目の前が真っ暗になった。
『お…父さん……?』
視界と声が、用を成さなかった。
まるでビシャリと冷水を浴びたみたいに体が引きちぎられて感覚が無くなる。
濁った瞳の色をして荒い息を吐いていた。
あんな姿の人が私のお父さん?
ずんっと突き上げられて、顎を逸らした時にひゅっ、と喉が鳴り、物理的な力によってやっと体が酸素を取り込んだ。
「────はっ、は…っ」
ミーシャが大きく目を見開き浅い呼吸を繰り返した。
この男性は確かに先ほど話をしていた私の家族だ。
(私の中にお父さん、が?)
撹拌を繰り返し止まない挿入行為。
腰をぶつけられるたびに馴染んだベッドに体が沈む。
掴まれている腕を振りほどきたかった。
怒張した先端を迎え入れたくなかった。
その時に絡む襞が立てる自らの水音から耳を防ぎたかった。
(違う。 これはお兄ちゃんの言った通りの悪魔なんだ)
醒め……て
音のない彼女の声が空気を掠めた。
(こんな夢はもう止めて)
ミーシャがぶるぶると体を震わせ、血を吐くような叫び声を上げた。
「っやああ、あッあああああ────!!!」