短編集 一区間のラブストーリー
第16章 短編その十六
初対面で身体を拭くなんて
嫌がるかなと思ったら
「わかりました、
それじゃ熱いお湯でタオルを絞ってきますね」と
彼女はバスルームに消えた。
おいおい、 恥じらう表情が見たかったのに、
やけにあっさりしてるじゃないか
いや、だが待てよ
ホームヘルパーなら半身が麻痺している患者さんになら入浴の補助さえするんだよな。
研修かなにかで
男性のヌードなら見慣れてるってことかな。
ん?入浴補助?
おお!よくよく考えれば
身体を拭くだけより、
そっちの方が楽しそうじゃないか
「すいませ~ん♪
予定変更していいですか?」
「え?身体を拭かなくていいんですか?」
よほど熱いお湯に浸してから絞ったのだろう、
ホカホカと湯気の出てるタオルを手にした彼女が
『これ、用意しちゃったんだけど』的な困った表情をした。
「あ、いや、ほら、
できたらお風呂でサッパリしたいかなあ~、
なんて思っちゃたりして」
ああ…きっと今の俺は
スケベな魂胆丸出しの間抜けな顔をしてるにちがいない
「足…捻挫ですよね?
身体を温めると患部が疼きだしますよ?
それに専用バスタブじゃないから
上手に補助できるか自信ないし」
「だ、大丈夫!
君に補助してもらえるんなら
痛みがぶり返しても我慢するからさ」
いつしか家政婦への指示というより
懇願する立場になりつつあった。
それじゃあ、バスタブにお湯を入れてきますね
そう言って彼女が再びバスルームに消えた
俺は急いでパジャマを脱ぎ捨て
パンツ一丁の姿になった。
最後の一枚だけは
彼女に脱がしてもらおうという魂胆だ。
「あら、パジャマ…
自分で脱いじゃったんですか?
私が脱衣のお手伝いしてさしあげたのに」
はい、お手伝いしてもらおうと
最後の一枚は残してありますとも
「では、トランクスは
私が脱がせてあげますね」
このときとばかりに
俺の息子はグングンと
勢いよく天に向かって育ちはじめていた。