テキストサイズ

短編集 一区間のラブストーリー

第16章 短編その十六


『さあ、じっくり見てくれ!』

トランクスが脱がされ、
晴れて自由の身になったジュニアが
ビクンビクンと跳ね上がった 。
だが、彼女は視線を逸らし、
わざと見ないようにしていた

バスルームでも彼女はヘルパーに徹した
もちろん局部もちゃんと洗ってくれたが
『元気なんですね』とも言わないし
『こんなにしちゃって・・・』とも言わなかった

なんだか妙にすべてにおいて淡々としていて
まるで自分が寝たきり老人になった気分に落ち込んでしまいそうだった

くそ!これじゃ計画倒れじゃないか
ほんとなら、もっとムーディになって
『よかったら君も一緒にバスタブに入ったらどうだい?』というふうに誘って
お風呂の中でニャンニャンするつもりだったのに。

期待していたバスタイムは、
あっという間に終わった。
こうなりゃ計画変更だ!

気づけば彼女は汗まみれだった。

そりゃ当然か。
湯気モウモウの狭いバスルームで
せっせと男の身体を洗ったのだから。

バスタオルで俺の身体を拭いている彼女の手を取り、その動作をやめさせた。

「汗まみれじゃないか、
どうだい、君も一風呂浴びるといいよ」

「いえ、けっこうです。慣れてますし」

「そう言われても、
そんな汗まみれで世話になるといのは
こちらとしても心苦しいんだ。
お風呂に入ってほしいというのは
お願いじゃない、君を雇っている俺の…
これは命令さ」

正確には雇い主は俺の母親だが、
雇用主からの指示とあらば
彼女も無碍(むげ)に断るわけにもいかず

「それじゃ…
シャワーだけ使わせていただきます」
とバスルームに消えた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ