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短編集 一区間のラブストーリー

第19章 短編その十九


『あなたがお勧めするのなら
買わせていただくわ』

お客様にそう言ってもらえてこその
外商部員なのである。

その関係を築くために、
誕生日には自腹でプレゼントを贈り、
家具の模様替えなどは
自ら応援を買って出たりもする。

西木あかねにしても、
そういった親身になってくれる朝比奈に
好感をもっていた

それは外商部と顧客という垣根を越えて
いつしかほのかな恋慕に近くなっていた。


『買って欲しいのなら、私を抱きさない』
あかねは何度、そう言ってみたかったか…
いや、冗談ではなく
多少の高額商品であっても、
朝比奈に抱かれるのなら
少し無理をしてでも買ってやろうと思っていた


西木あかねは、所謂、成金だった。

先祖代々、受け継いできた山の中の
どうしようもない土地を持っていたが
そこへ高速道路ができるとなって、
その値打ちのない土地が膨大なお金を生んだ。

その数年後には主人が交通事故で亡くなり、
保険金や賠償金なども手に入り、
まさにお金には
不自由しない生活ができるようになった。

お金ができると友人関係も一変した。
好むと好まざるに関わらず、
セレブと呼ばれる人たちが親交を深めようと
近づいてきた。

そんな折、あるセレブ夫人から
徳井百貨店の朝比奈を紹介された。



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