短編集 一区間のラブストーリー
第20章 短編その二十
「なあ…そろそろ休憩しようぜ~」
純一は集中力が続かない奴だ。
30分ごとに休憩したいと言い出す始末だった。
「このページを済ませてからな」
俺は純一の顔も見ずに
必死にペンを走らせながらそう言った。
「俺はお先に休憩するぜ」
そう言って純一はテレビの電源を入れた。
番組は毎年のように
この時期に放送される「ホームアローン」が流れていた。
ストーリーを知っているせいか、
それとも見飽きたせいか
ものの数分で純一はイビキをかきはじめた。
『ったく、のんきな野郎だ』
年が明ければ
すぐさま受験だというのに…
「お二人さん、少し休憩しない?」
母子そろって
体内時計がピッタリなのだろうか、
純一の母ちゃんが
パンケーキを焼いて持ってきてくれた。
俺はそいつを頬張りながら
「今夜は静かなんですね」と、
階下を指差して尋ねた。
「あんたたちが勉強するっていうから
今夜は臨時休業よ」
純一の家は一階で昼は喫茶店、
夜はスナックを経営していた。
「ほらほら、お口にシロップが…」
純一の母ちゃんはそう言って
俺の口元へ指を伸ばして
唇のシロップを指で拭ってくれた。