短編集 一区間のラブストーリー
第4章 短編その四
「あなた、名前は?」
尋ねると少年はガキと名乗った。
だってあいつらがそう呼ぶからと彼は笑った。
私の名は‥‥
「女だろ?あいつらがそう呼んでた」
まったく、なんのことなのか
さっぱりわからなかった。
異様なのは、その姿だ。
少年は、その‥
一糸まとわぬ素っ裸だったのだ。
かわいい成長過程のおちんちんを
ブラブラさせ、
まだ産毛状態の飾り程度の陰毛を生やしていた。
「あなたは、なぜ裸なの?」
問いかけると、
「女、お前も裸じゃないか」と言った。
言われて、自分を見下ろすと
自分自身も裸なのに気づいた。
なぜ全裸でこんなところに横たわっていたのか、
いや、それよりもなぜこんなところにいるのか…
すべてが謎だった。
日が暮れると、急激に気温が下がり始めた。
樹木のない地域には
こういった気温変化がみられる。
「行くよ」
空のバケツを持たされ、ガキが私に命令する。
「離れないようにね。
夜だとあいつらは動き出さないだろうけど、
念のために周りに注意して。
なにか動く気配がしたら、
しゃがんでジッとするんだ。いいね」
よく理解できなかったけど、
そうすることで安全ならその命令に従うことにした。