短編集 一区間のラブストーリー
第5章 短編その五
これから先、電車は何度も揺れる。
私はしっかりと足を踏ん張った。
ガタン…また大きく電車が揺れたが
私はバランスを崩すことなく仁王立ちしていた。
だが今度は彼女がつり革を持っているにもかかわらず
私にもたれかかってきたのである。
彼女の体を支えるべく、自然と私の手の甲は
彼女のヒップへと…
彼女は再びペコリと頭を下げた。
いやいや、お互い様ですし…
今度は私が彼女の背後で頭を下げた。
そうこうするうちに
そのうち、電車が揺れなくても彼女は私に体を預けるようになった。
酔いが回ってしんどいのだろうか…
最初はそう思っていたが、
彼女のヒップがクイクイと動き、
私の手の甲を責め始めました。
これは一体…
そう、彼女は誘っているのだ。
私に尻を触れと催促しているのだ。
私はそう思い、文字通り手のひらを返して
彼女のヒップの谷閒を撫で上げた。
「あんっ…」
微かに彼女は声を漏らした。
何事かと彼女の前に立っていた婦人が怪訝そうに
彼女を見つめた。
なんでもないのと言わんばかりに彼女は婦人にペコリと頭を下げた。
婦人もまた安心したかのように彼女に背を向けて車窓の景色を眺めはじめた。