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白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~

第12章 令嬢 緑川志保


「お前さあ、なに俺にくっついてんの?
男同士並んで座っても仕方ないだろ?」

えっ?集団見合いみたいなもんなんだから
男性側と女性側に
分かれたほうがいいんじゃないの?

そういう座り方をする奴らもいるけど、
俺たちはもっとこう
親近感をアップさせたいんだよなあ。

直樹はそう言って、バラバラに座わらされた。


しばらくすると、「お待たせ~」と
可愛い声で女の子たちがやってきた。
最後に入ってきた女の子を見て、
僕は「あっ!」と声をあげた。

なんと、あの電車で
向かい側に座っていた女の子だったからだ。
先方も僕に気付いたらしく
「あら?」といった表情を返してくれた。


幸運なことに、彼女は僕の隣に座ってくれた。

「とりあえず、乾杯しようぜ!」

直樹の音頭で
コップに注がれたビールで乾杯した。
初めて飲んだビールは
決しておいしくはなかった。


さあさあ、自己紹介しようぜ。

誰かが楽しそうに仕切り始める。

みんな、こういった場に慣れているのか、
面白おかしく自己紹介を始める。

そして、僕の順番がやってきた。

「え~・・・W大文学部1回生の
江本順也です。
将来は作家になりたいと思っています」

ちょこんとお辞儀をして着席する。

えっ?それだけかよ~っとヤジが飛ぶ。

でも他に何を言えばいいのさ。
専ら右手が恋人ですとでも言えばいいっての?


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