白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~
第3章 里中先輩
それぞれのペアが、
10分ごとに合宿所をスタートしていく。
いよいよ、僕たちの番だ。
「さっ、行くわよ」
「は、はい」
さりげなく里中さんに
手を繋がれてしまった。
まるで、お姉さんに手をひかれていく
頼りない弟みたいな感じだ。
「去年も行ったところだから、
道案内はまかせてね」
「よろしくお願いします」
暗い夜道を、僕たちは歩き始めた。
20分も歩いただろうか。
なんか、里中さんの様子がおかしい。
やけにキョロキョロし始めた。
「おかしいなあ・・・」
「どうしたんすか?」
「道をね・・・間違えたみたい・・・
迷っちゃった」
「えっ?」
「さっきの分かれ道を右だったかな・・・」
「じゃあ、さっきの分かれ道まで
戻りましょうか」
「うん。でも、ちょっと
そこの岩のところで、休憩しない?ねっ」
「いいですよ」
ふたりで手頃な岩に腰掛け、
少し休むことにした。