白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~
第18章 最終章
僕は我が目を疑い、
何度も何度も手紙を読み返した。
本当に?本当に理恵なのか?
数日ためらった後、
僕はスマホを手にとって
書かれていた番号に電話してみた。
『はい、川原です』
その声だけでは
理恵ちゃん本人かどうかわからなかった。
30年という時間の流れは
当時の声の記憶を消し去っていた。
たとえ記憶があったとしても、
お互いに変声期を迎えて
わからなかっただろうが・・・
「もしもし・・・順也です」
「順也くん?・・・
ほんとうに順也なの?」
「理恵ちゃんなのか?」
「理恵です。嬉しい・・・
ほんとうに連絡が取れたなんて・・・」
聞けばすこし離れているものの、
同じ都内に住んでいるという。
逢いたいねという問いかけに
「いいの?逢ってもらえるの?」
という弾んだ声が
僕の耳に小気味良く響いた。