白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~
第10章 順也と理恵 それぞれの歩む道
♪ほた~るのひ~か~り・・・
三年間の中学校生活を終え、
本日の卒業式を持って僕たちは母校を巣立つ。
思えば先生に怒られっぱなしの三年間だった。
それもこれも直樹のせいだ。
直樹に誘われ、女子更衣室を覗いたり、
タバコの味を覚えたり。
しかし、とりあえず
高校の進学も決まったことだし、やれやれだ。
ただ気がかりなのは
男性自身の成長がイマイチで、
未だに包茎だということか。
「江本君・・・」
卒業式を終え、
家路を急ぐ僕に
後ろから声をかける子がいた。
振り返ると、
同じクラスだった野口香織さんだった。
「ん?なんか用?」
「う、うん・・・」
モジモジしてなにか話しづらそうだ。
「あのね、もし、もしよかったら
制服の第2ボタンもらえないかなあ」
「ボタン?いいよ。
もう着ることもないしさ」
ボタンを引きちぎり渡してやる。
「私、江本くんのこと好きでした」
そう言ってボタンを大事そうに握りしめ、
走り去った。
『好きなら在校中に言えばいいのに・・・
そうしたら付き合って学校生活も、
もっと楽しくなったのにさ』
女の子の気持ちってわからねえや。
僕は走り去る野口さんの背中を
ボンヤリと見送った。