神の口笛
第10章 10
…
レイモンドは日が暮れるとしょっちゅう芝生を駆けてエマの元にやってきた。
部屋には入らず、そっとリンゴやブドウを手渡したり、異国の絵葉書を見せてくれたりした。
「どうしてそんなに良くしてくれるの?」
結婚は断ったはずなのに、それでもこうしてくれるのがエマには不思議だった。
「はは、分かってるだろ。僕はキミが欲しい。好きなんだ。だから、キミを笑顔にしたい。」
「…。」
「今日はもう戻るよ。それじゃ、おやすみ。良い夢を」
基地には欲情にまみれる男ばかりで、こんなふうに誠実な男はグレイやルイのほかに知らなかった。
エマの嫌がることは一切しない上、こうして少しの会話をしにやって来る姿に、エマは考えを変えつつあった。
…
その日は早めに護衛が終わり、湯浴みを済ませたエマは部屋に戻る。
「…っ!!!?」
窓の外にグレイの姿が見えた。
沈みゆくオレンジ色の太陽に照らされている大きな男…。
夢だろうか?
いや、本当にグレイだ…―――。
「グレイっ!!」
小窓の横の小さな扉を開け、すぐに部屋に促す。
「どうしてここに?!なんで?!」
嬉しさで声が跳ねる。
「伝令でな。これから数か月に一度は来る事になるはずだ。」
離れてから2ヶ月が経っていた。
立ったまましばらく抱き合い、久しぶりのそれに鼓動を速めながらも口づけた。
「会いたかった…。」
「俺のセリフだ。」
小さい部屋を案内するには、一言二言でじゅうぶんだった。
「いつまでいられるの?」
「明朝までには船着き場に戻る必要がある。少し眠って、4時にはここを出る。」
「そう…。」
どんどん沈んで見えなくなっていく夕陽に、やるせなさが湧いた。
「そんな顔をするな。おいで。」
グレイはエマを優しく持ち上げ、ひざの上に乗せた。
「ここで眠らせてくれるか?」
「もちろん!ベッド、小さいけど…」
互いの熱が通じ合う。
レイモンドは日が暮れるとしょっちゅう芝生を駆けてエマの元にやってきた。
部屋には入らず、そっとリンゴやブドウを手渡したり、異国の絵葉書を見せてくれたりした。
「どうしてそんなに良くしてくれるの?」
結婚は断ったはずなのに、それでもこうしてくれるのがエマには不思議だった。
「はは、分かってるだろ。僕はキミが欲しい。好きなんだ。だから、キミを笑顔にしたい。」
「…。」
「今日はもう戻るよ。それじゃ、おやすみ。良い夢を」
基地には欲情にまみれる男ばかりで、こんなふうに誠実な男はグレイやルイのほかに知らなかった。
エマの嫌がることは一切しない上、こうして少しの会話をしにやって来る姿に、エマは考えを変えつつあった。
…
その日は早めに護衛が終わり、湯浴みを済ませたエマは部屋に戻る。
「…っ!!!?」
窓の外にグレイの姿が見えた。
沈みゆくオレンジ色の太陽に照らされている大きな男…。
夢だろうか?
いや、本当にグレイだ…―――。
「グレイっ!!」
小窓の横の小さな扉を開け、すぐに部屋に促す。
「どうしてここに?!なんで?!」
嬉しさで声が跳ねる。
「伝令でな。これから数か月に一度は来る事になるはずだ。」
離れてから2ヶ月が経っていた。
立ったまましばらく抱き合い、久しぶりのそれに鼓動を速めながらも口づけた。
「会いたかった…。」
「俺のセリフだ。」
小さい部屋を案内するには、一言二言でじゅうぶんだった。
「いつまでいられるの?」
「明朝までには船着き場に戻る必要がある。少し眠って、4時にはここを出る。」
「そう…。」
どんどん沈んで見えなくなっていく夕陽に、やるせなさが湧いた。
「そんな顔をするな。おいで。」
グレイはエマを優しく持ち上げ、ひざの上に乗せた。
「ここで眠らせてくれるか?」
「もちろん!ベッド、小さいけど…」
互いの熱が通じ合う。