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神の口笛

第10章 10


「とても痛かった。…ううん、クリスとひとつになれたのは、すっごく嬉しいのよ?でもあんなに痛いなんて…」

「私も初めは痛かった。」


「これが気持ち良くなっていくなんて信じられないわ。」

「そ…そうだね。」

エマはグレイとのまぐわいを思い出していた。


「すっごく優しかったけどね、やっぱり痛いのよね。エマの相手も優しくしてくれた?」

「うん。すごく…。」


もう1年以上も音沙汰がなく、どこにいるのか、生きているのかもわからないグレイ。

エマの顔は曇る一方だった。







「もう、出会って2年以上も経ったんだね。戦争は嫌だけど…出会えたことには本当に感謝しているよ」

その年の終わり、真っ白な雪が積もる中レイモンドはやってきた。


相変わらず、グレイがどうしているのかを知る術がエマにはないまま…2年が経っていた。

2年も戦地に派遣されるなんて、これまでに聞いたことがない。


ごくたまに届くステラからの手紙にも、グレイが戻ったと知らせる一文はないままだ。

嫌でも最悪の事態を考えてしまう。

グレイ。あなたはもう…―――?











「エマ、僕はきみを愛している。どんな未来が来ても、僕の心は一つだ。」

めげずにアプローチしてくる紳士的なレイモンドに惹かれ始めているのはエマ自身も感じていたが、プラトニックな関係は続いていた。


同じ頃、王女であるエイミーの夫候補探しが始まった。

クリスを愛している彼女は頑なに拒んだ。

しかし、名家のよくできた男と結婚すべきだと言う国王もまた譲らなかった。


クリスが夜な夜な逢瀬にやってくる回数は増えてゆき、時折ふたりの声が聞こえてくることもあった。

このままでは2人の関係がまわりに知られるのも時間の問題かもしれない。



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