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神の口笛

第10章 10

……


3年後―――



26歳になったエマは、レイモンドに縁談の話があると知った。

彼をたいそう気に入っている国王が、育ちの良いお嬢さんを紹介したのだとエイミーは言っていた。


「やぁ、体調は平気かい?」

テオヌがあけた頃、レイモンドが部屋にやってきた。

いつしか彼の笑顔はエマの癒しになっている。


「うん!お茶淹れるね。」

彼は未だに「お邪魔します」と律儀に頭をぺこりと下げる。そしてそっと部屋に入ってきた。

初めて部屋に招き入れたあの雨の日から、こうして一緒にお茶を飲みながら話をすることが多くなった。



「エマ、風邪をひくよ。」

湯浴み上がりの濡れた髪にタオルをふわりとかぶせながらレイモンドは言った。

「うん…」

潤ったエマの瞳がレイモンドを見上げる。


「甘い香りがするね」

いつかグレイに言われた記憶は、3年という月日に流れ、すっかり薄れていた。


出会った日から変わらず安らぎをくれるレイモンドを見つめる。

その端正な顔立ちが少し照れたように崩れた。


「今も私のことが好き…?」

ハッと驚いたように彼は再びエマを見た。

「もちろんさ。ずっと変わらない。どうしてそんな事を聞くんだい?」


そっと、彼女の頬に指を這わせる。

見つめ合った刹那、重なった唇、もう止めることは出来ない…―――




「ん…は…ぁ」

火傷するほど熱いレイモンドの舌が絡みつき、やがて厭らしく糸をひいて離れた。


パチパチと暖炉で燃える薪の音だけが響く。


「レイモンド……私…――」

「いいんだ。なにも言わないで」



―――――……





こわれものを扱うような優しいSEXは、静かにエマを絶頂へ導いた。


身体を重ねた男性は2人目だが、それでもペニスの大きさや愛撫の仕方がまったく違う事を知った。


一方レイモンドは、エマがヴァージンではなかったことに内心驚いていた。

しかし、そんなことを問うのは無粋だ。今はこの悦びに溺れたい。


それでも脳裏に浮かんでしまうのは、相手はあの男なのか…?という思いだった。


愛液を滴らせてよがるエマ、ちっとも痛がらないエマ、まるで既に誰かの唾がついているような感覚。


沸き上がる嫉妬を押さえつけるように、ぎゅっとまぶたを閉じた。


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