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神の口笛

第10章 10




結局、クリスは罰として3日間独房に収監された。

拷問などはないが、飲まず食わずで貼り付けにされる彼をエイミーは心配し、連日涙した。


エマはあくまで隣国から派遣された護衛であり、スピリルでの色恋沙汰に関連はないとのことで罰は無かった。


あの日以来、国王と口を聞かなくなったエイミーは、なにを言われてもお見合いをしようとしなかった。












4年後―――


エマが27歳になったその年、レイモンドは国王の持ちかけた縁談に承諾した。

1年も返事に渋るのは異例だったが、それでも国王は良い返事を期待して待っていたようだ。



エマの部屋の戸をノックし、無言で佇んでいるレイモンド。

彼女もまた無言で、部屋に招き入れた。

互いに表情はやわらかい。



「エマ。ここに来るのは今日で最後だ。」

「…うん。」

彼の目を見て、しっかりとうなずいた。



「僕は明日、正式に婚約を交わす。独身なのは、今日までさ」

へへっ、とはにかむレイモンドの前髪に触れた。


「レイモンド…。」

「そんな眼で見ないでくれ…決意が揺れてしまうだろう」

そう言いながらも、彼は優しい表情でエマを見つめた。



「本当に…ありがとう。本当に…」


視線をおとすエマの唇に、一年越しの熱が重なった。


「エマ。僕はまだ、キミを……」

彼はそれ以上言わなかった。




出会ってから、変わらず4年以上も愛してくれた人。


私も愛せたのなら、どれだけ良かっただろう。



これが最後だと互いに言い聞かせるように、果ててしまうのを恐れるように、それでも体を重ねた…―――










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