神の口笛
第10章 10
レイモンドの婚姻の儀は滞りなく終わり、もうノックされることのないドアは役目を終えたように静かに佇んでいた。
寂しい気もしたが仕方ない。これでいいんだ。
今頃ステラたちはどうしているだろう。
グレイは…――。
レイモンドのことを一時好いたものの、罪悪感ともいえる感情が次々に湧いてくる。
そんな思いにさいなまれながら、淡々と日々の任務をこなしていた。
エイミーは家を出て一般人となってでもクリスと一緒になりたいと望んでいた。
初めは憤慨していた国王だったが、彼女のその思いに最近では心を許し始めている。
クリスは訓練での努力と成績を買われ、通信部隊長の補佐として鍛錬を積んでいる真っ最中だ。
「彼は先陣をきって戦うタイプじゃないし、身体も華奢でしょう?だから通信部はピッタリだと思うの。でもやっぱり、戦地に行かれるのは心配で仕方ないわ。はぁ…」
今日も乙女エイミーの悩みは尽きない。