神の口笛
第1章 1
その後、キスもしたことがないと言うとまたステラは飛び上がった。
「もしかしてエマ、…レズビアンだったり?」
「何それ?」
「女を好きな女のこと!」
「ステラのこと好きだよ??」
「ちょ…っ…そういうんじゃなくって!」
赤面するステラとは打って変わって、エマは「?」をたくさん浮かべてキョトンとしている。
「ステラも私のことが好きだと思ってた。こういうのレズビアンって言うんだね」
「ち、ちっがーう!エマ、私とキスしたいだなんて思わないでしょ?!」
「それは思わないよ」
「えぇっと、だからつまりね…エマは男の人とキスしたい?女の人とキスしたい?」
「んぅう…考えた事ないよ。ステラのことは好きだけどキスしたいわけじゃない」
「じゃあグレイさんの事は?」
「もちろん好き。」
「キスしたい?」
「分からない…。でも、キスは男と女がするものだと思ってるよ」
「ふふっ。それならエマはレズビアンじゃないよ。私たちの”好き”は友情!絆!グレイさんに対するのは、恋とか欲とか、愛とか…かな」
「難しい。けど、コイなら分かるよ。孤児院の池にいたもん」
「それはね、恋じゃなくって鯉……あぁ、もういい。これからゆっくり色々教える必要があるわ、エマには」
…
大きな雷の轟音が響き渡る。
慰安婦部屋の壁は薄く、隣室から卑猥な喘ぎ声が時折きこえた。
「ふぅん?でもそのエマちゃんと、血は繋がっていないんでしょう?」
「ああ。」
「それなら気にすることなんて少しもないじゃない」
「まぁ…。ん…。」
「愛しているんでしょ?」
「兄として、だ。」
「ふふ。不器用な人なのね」
「…?」