神の口笛
第1章 1
「ある…のが普通だからな、ここの男は」
「いつ?」
「…。なんだよ。そんなこと聞いてどうする。」
「だって…」
「なんだ?」
「みんな、もうしたことがあるんだって。私は…マイノリティだって。私って変なの?」
そういう事だったのか、とグレイは腑に落ちた。
「変なもんか。お前はなにも気にしなくていい。言わせておけ」
「んぅ…。」
「ほら。目を閉じて」
しかしグレイはこの夜も動揺していた。
子供だと思っていたエマだって普通の人間だ。
いずれ性に興味を持つのが自然な流れかもしれないが、どう対処をしていいのか分からないのも事実だった。
…
弥生の小屋で目が覚め、そういえば昨夜からここに来ていたんだと思い出す。
女兵士たちはテオヌが始まる日の前夜から弥生の小屋にこもる。
毎日服用する避妊薬が白色なら通常で、赤色なら翌日にはテオヌになる。
医療部にがっちりと管理されており、ごまかしはきかない。
「えっと~今日からこもるのは。…エマね!久しぶり」
女医のソフィアがカルテを持ってやってきた。
「ソフィア!ずっといなかったね。どこに行ってた?」
「西の地に応援に行ってたのよ。地雷が大量に見つかってケガ人がたくさん出たから」
その知らせはエマも知っていた。
1年前の抗争で落とされた大量の地雷が、少し前に暴発したんだ。
「ちょうど身体測定の時期だから、この問診票に沿って…」
「まだ文字は出来ない。」
「分かってるわ♪私が聞いていくから答えてね。…―――」
ソフィアは、エマが軍入りした時からずっと在籍している医師だ。
この5年間のエマの身体的成長を一番よく分かっている。
口元のホクロと、いつも谷間を強調した服装で、男兵士から大人気だ。
ソフィアもまんざらではなく、ちょこちょこと男をつまみ食いする癖がある。
「次。性交渉の有無。どう?もう済んだ?」