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神の口笛

第2章 2



グレイが昼休憩で北棟に戻ると、すぐにビアンカから話しかけられた。

深刻な表情で、なにやら相談があるのだと言う。

困ったが、ひとまず時間は取ると約束した。

できれば…また変な噂になるような浮いた話は作りたくない。



「おいグレイ、まだ時間には早いだろ?どこ行くんだよ」

「ちょっと東棟へ行ってくる」

あぁ、はいはい、エマちゃんのところね。と何人かの男兵士が口にし、ひらひらと手を振った。



東棟の食堂には、今来たばかりという風貌のエマがいた。隣には同室のステラも一緒だ。


「エマ!」

呼びかけると瞬時にエマは振り向いて、びっくりしたような嬉しいような、複雑な顔をした。

すぐに周囲がザワつき始める。


「うわぁ、グレイさんだ」
「なんで東棟に?」
「妹がいるんじゃなかった?」
「オーラあるなぁ」



ステラはエマの肩を小突きながら、呼んでるよ、早く行きなよ、と急かした。


グレイの元に駆け寄る。


「どうしたの?こっちに来るなんてめずらしい」

「休憩どきに悪いな。今日テオヌ明けだろう?体調は平気か。」

「うん。大丈夫。今日の弓矢の成績は一番よかった!」

「そうか。よくやった。」

「それで、用事は?」

「ああ。よくできたトマトを今朝もらってきたんだ。今夜部屋に来たら良い。」

エマの顔がキラキラと輝き、やっぱり農地まで行って良かったなとグレイは感じた。



去るグレイの背中を見送り、エマはステラの待つテーブルに戻る。


まわりから好奇の目で見られるが、エマにはよく分からなかった。


「ふふっ!」

「なに笑ってるの」

「エマとグレイさん、並ぶと凸凹で…なんだか可笑しくて。」

「私のことチビって言ってる?」

「グレイさんが大きいだけだって言うんでしょう?」

「そう。グレイが大きいだけ。」


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