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神の口笛

第2章 2



午後、男兵士たちは"本神様(ほんじんさま)"と呼ばれる大きな木彫りの蛇をえっさほいさと運んできた。


御神木の隣に置かれると、いよいよ大祭りの雰囲気が漂う。


女たちは大量のテーブルや椅子の用意、受け取った物資の運搬で忙しく、夜は大祭りに向けて”身の清め”もする。

この日だけは女子の大浴場に塩を含ませた冷水が張られ、女兵士はそれに身体を沈める。

大祭の前夜に身を清め、清い身体で大祭りの儀式を迎えなければならないのだ。

つまり、今夜は何人たりともSEXをしてはならない。

身の清めは冷たいが、エマはこれが好きだ。







その頃、グレイは困っていた。

約束の時間よりも早くビアンカが扉をノックし、大広間へ行こうと言っても聞かないのだ。

そもそも、部屋に来ると言う約束でもなかったはずなのに。


「困るんだ、こういうのは…。」

扉の前で立ち往生だ。

「どうしても、誰もいないところで話したいんです。」

「……はぁ…。」

グレイは、仕方なくビアンカを部屋にいれた。

椅子に座るよう促し、自分はベッドに腰掛ける。

デスクにはエマにやるトマトが赤赤と光っていた。



「それで、相談というのは?」

「グレイさん……――――」





………ビアンカの話は要するに、自分を抱けというもので、込み入った相談などはなかった。

どこかで予想していたが、やはりそうだったのかとグレイは肩を落とす。


「軍や隊列の中で、なにか問題があったのかと心配しただろう。まったく…。」

「私にとっては、グレイさんのことは大きな問題です!」

「何度も断ったはずだ。そうじゃないとしたって、今日の性交は決して許されない。分かっているだろう。」

「でも…っ。駄目なんです、諦められないんです…。お願い…グレイさん…一度だけでいい。抱いて下さい」


ビアンカは涙を浮かべながらグレイに歩み寄る。


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