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神の口笛

第2章 2


元来の大祭りは、神に捧げる詩を朝まで詩い続けた歴史がある。

それが現在では「朝日を見るまで宴をする」という風習に変わっている。

いつもエマは眠ってしまうので、そばでグレイが見守っていて、日が出る前に起床して2人で朝日を拝んできた。


今年は……。


「エマ!」

ルイに肩を叩かれて我に返る。

いつの間にか祈りの儀式は終わっていたようだ。

「どうしたんだよ?浮かない顔して。ほら、葡萄酒飲みに行こう!」

「…うん!」



木製のテーブルがいくつも並び、数えきれないほどの兵士たちが今日は白装束をまとって談笑している。

グレイよりも大きな樽が各所に置かれていて、そこから自分のグラスに注ぐ。


「「おめでとう!」」

ルイとステラ、エマの3人でグラスをぶつけた。

早速コクリと一口、喉に落とす。

今季の葡萄酒は…

「すっごく美味しい。」

「ほんとだ!」

「こないだのは、酸っぱかったもんね。これだと飲みすぎちゃうなぁ。」


クベナ教の大祭りは年2回。

毎回、皆この葡萄酒を楽しみにしている。

そして普段はなかなかありつけない様々な種類のチーズが、大祭りの日にはたくさん食べられる。


「座ってチーズ食べようよ。ほら、エマの好きな山羊のチーズもある!」

ルイとステラは、どこかエマを元気づけようとするような態度だった。

せっかくの大祭り、楽しまなきゃ。

そう思いなおし、数ある中でもまずは純白のチーズを手に取った。









昼を過ぎると、そこいらで寝始める兵士も現れる。

これがいつもの光景で、これぞ大祭りだ。

葉の季節の風は心地よく、兵士たちの間を通り過ぎていく。


「ルイ、騎馬隊にはもうすっかり慣れたでしょ。頑張ってる?」

ステラが大きな口で肉を食べながら言った。

「うん、だいぶね。隊長が怖すぎてサボれないし…ははっ」

隊長とはグレイの事だ。

軍の中には特攻騎馬隊が3班あり、グレイはその中のひとつを率いている。


ルイは1年前の抗争の鎮火を機に、歩兵から騎馬隊へ移った。

グレイとルイは同い年だが、騎馬ではグレイが隊長なのでルイはたまにわざと”隊長”と呼んだりする。


「どんなふうに怖いの?」

エマは単純に、自分と一緒にいないときのグレイがどんなか気になった。

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