神の口笛
第3章 3
ふたたびテーブルへ戻ると、酔っぱらった様子のルイが手招きした。
群がっていた女たちはグレイの存在に若干後ずさる。
エマは促されるままルイの隣に座ると、エマを挟むようにグレイも腰掛けた。
「おめでとう!」
また楽し気に話し始めるルイを見て、女たちもだんだんと打ち解けていった。
さっきまでルイが1人で浴びていた色っぽい視線は、今度はグレイにも注がれる。
「エマのお兄さんって本当?」
1人の女兵士が訪ねてきた。
基地内に120人ちょっとの女兵士たちは、だいたいみんな顔見知りだ。
ただ、棟や部隊が違ったり、派閥もある。
この女は誰だったかな…、とエマは思いながら答えた。
「孤児院で育ったから。」
すぐに周囲からワァと声が上がる。
「じゃ、じゃあ…血は繋がってないんだ?」
「うん。」
今度は女たちから意味深な視線が注がれた。
「でもさっ!本当の兄妹と変わりないよね?」
「そうだよねっ?」
「もう、ほとんど家族みたいな感じだよね!」
口々に言われ、エマは黙ってしまった。
本当の兄妹でないなら、なにかまずい事でもあるのだろうか。
血のつながった本当の兄妹でないといけなかったのだろうか…?
グラスに入った葡萄酒を一気に飲み干したグレイが、「そろそろ行くぞ」と言ってエマを立ち上がらせる。
「もう~?寂しいなぁ。」
ルイは引き留めるでもなくそんなことを言った。
ふわふわと浮足立つ両足を見ながら、おぼつかない足取りで歩くエマは楽しそうだ。
「今年の葡萄酒は美味いな。」
「うん!すごく。もっと飲みたい。」
「部屋にボトルがある。けど…ちゃんと起きれるか?」
「大丈夫っ。」