神の口笛
第3章 3
サラシをつけていないために、エマのバストトップの感触がはっきりと指に残る。
ほんのり硬く起き出していたそれは、グレイの思考回路を一瞬停止させた。
当の本人は、今のが何だったのか把握できず、少し混乱した様子でキョトンとしていた。
「すまない。…こそばゆかったろう。」
なにもおかしな事はない。とでも言うようにグレイは取り繕った。
「ううん。大丈夫」
「まだ続けるか?」
「もう少し…」
グレイの手が上ってきて、乳房の手前で止まる瞬間…
このときが一番、息が上がる。
「………ッ…はぁ……」
手の甲で唇を押さえ、必死に呼吸を続けた。
「どこか苦しいのか?」
「ん…っ…」
病気になったのか、これが性的ななにかなのか、エマには分からない。
苦しくもあるし、気持ち良くもあって…
「大丈夫か?」
「…うん。」
火照った頬のエマは、潤んだ瞳でグレイを見た。
腹から手を抜き去り、いつものように胸元をそっと叩いてやると、エマはゆっくりと夢の中へおちていった。
先ほどのエマの甘い吐息…乳房の感覚……
グレイは今すぐにでもすべて放出してしまいたかった。
しかし、できるわけがない。
安心しきって眠るエマの隣で、そんなことは。
…
これまでのように朝日を拝み、大祭りは終わった。
また通常通りの訓練生活が始まって3週間が経つ。
「さっさと走れ!」
最近、リーダーであるマルコスがいつも以上に苛立っている。
今日は東ブロックの合同訓練。
戦場を模して一連の流れを確かめるのだが、やることが多くせわしないのでエマはこれが苦手だった。
実際に戦地に赴いた場合、エマはほとんど同じような場所で、ひたすら弓矢を放つ。
こんなにバタバタと動き回ることは、通常ないわけだ。