神の口笛
第3章 3
「何度やっても慣れないね…。実際の戦闘と全然違うし」
やはりステラも不服なようだ。
「だね。」
「本当だったら、私たちが救護にあたるのおかしいと思うんだ。遠隔攻撃する部隊なんだからさ、私たちが戦ってる間に歩兵が救護すれば良いのに。」
「私もそう思う。」
「いくら訓練って言っても、実際の持ち場の訓練じゃないなら意味ないよね。」
「うん。」
ステラの意見に賛同して頷いたとき、背後で怒鳴り声が上がった。
「なにか文句があるのか?!」
振り向くとマルコスが立ちはだかっていた。
「いえ!ありません!!」
条件反射のようにステラは敬礼した。
エマは否定も肯定もせず、ただマルコスを見ている。
そんな態度に、マルコスはズカズカと近寄ってエマの首を掴んだ。
「夕食を終えたら俺のところへ来い。分かったな。」
低い声を轟かせてから、ふんっ、とマルコスは鼻息荒く去っていった。
「ひえぇ…マルコスさんから直々にお説教?最悪だねエマ…」
最悪。という言葉が本当にそのとおりすぎる心持ちだったが、しょげている姿を見せるのは気に食わない。
マルコスが目くじらを立てているのに気付きつつも、意地で訓練をこなし、何事もなかったかのように東棟へ帰った。
…
「大丈夫?」
湯浴みをしながらステラが問う。
「大丈夫だよ、全然。」
「適当に謝ってさ、さっさと終わらせなよ。」
「うん…。」
あの男から小言を浴びせられると思うと気が重く、夕食はほとんど食べられなかった。
まだバクバクと食べ続けるステラを置いて早々に切り上げ、マルコスの部屋に向かう。
…
めんどうなことになっちゃって、エマ災難だなぁ。
すぐ開放してくれればいいけど。
…そんなことを思いながら、ステラは最後の骨付き肉を頬張った。
ふと、そばで食事をとる男兵士の会話が聞こえる。
「最近のマルコスさんの苛つきったら、すごいよなぁ。」
「本当、たまんないよ。勘弁してほしい。」
「こないだなんて、慰安婦部屋が混んでてさ…暴言吐きながら戻ってったよ」
「なんだ、溜まってんのか?ははっ」
ステラは嫌な予感がして、慌てて夕食を片付ける…―――