神の口笛
第3章 3
やがてソフィアも駆け付けた。
「ごめんね、エマ。つらいかもしれないけど…全部教えて。なにをされたの?」
…
「それじゃ、SEXは無かったのね?アヌスにも」
「うん。」
ソフィアはふうっと胸をなでおろした。
あとは精神面のケアだ。
なにかトラウマが残ってしまった場合、女性として今後の人生に支障をきたす事だってある。
「まずはケガを直さなきゃね。それから…エマ、今どんな気持ちか正直に言える?」
正直もなにも、エマはこれまで嘘というものを使ったことが無かった。
「悔しい。」
「どんなふうに?」
「力が強くて、勝てなかったから。なめられて悔しい」
「そうね。ほかには?」
「うぅん…。マルコスがきらい。」
「そりゃそうよ!当然だわ。…悲しいとか、ショックだとか、そういうのはある?」
「ない。」
「そう…。分かった。数日間はここに泊まるのよ。毎日消毒しないと」
「うん。」
エマは医療棟のベッドで、眠れない夜を過ごした。
グレイは何してるだろう。
この事を知っているのかな…。
ケガをしたと聞いたら、きっと心配するだろう。
明日にはトマトを持って、見舞いに来てくれるかもしれない。
「あっ…」
流れ星が光った。
男の力にかなわなかった現実が、あとからあとからエマを虚しくさせた。
…
「未遂で終わったとはいえ、同意なき性交は極刑に値します。」
「そのとおりだ。もしこれを許したら秩序が保たれまい。」
神職と軍、それぞれの代表者たちによって、エマが暴行にあったその夜のうちに会議が開かれた。
マルコスはリーダーの座を剥奪され、後任を副リーダーだったルイが就任することとなった。
クベナ教では、同意なき身勝手な性交は自発攻撃よりも罪深いとされ、本来なら極刑…つまり死罪だ。
「ただ、今回は性交渉をしたわけではなく…」
「うむ。これまでに一度も無かったわけではないが…判断が難しいところだ。」
「数年前の事例では、川流し…まぁこれも、死罪と同等ですがな。」
重役たちは髭をいじり、うーんと唸った。