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神の口笛

第3章 3


クベナの教えでは、この世を去った者は神となる。

しかし罪を犯した者は神になる権利をなくすため、それ相応の報いが必要とされている。

何らかの形で罪を償わない限り、その怨霊は永久に彷徨う。


「マルコスは性交渉の強要だけでなく、出血…縫合をも伴う暴行をはたらいています。拳を一発と、ナイフで切り付けるという…」

「この罪は重い。」









グレイとはそれから4日間も会えなかった。

ステラたちは訓練で忙しいだろうが、グレイなら時間を作る権限があるはずなのに…。


「どうしてグレイは来てくれないの?」

オリバーに聞いても、「マルコスのところだよ」としか教えてくれない。

「何をしてる?」

「さぁ、何だろうねぇ…。」


オリバーはマルコスが拷問にかけられるという審判が下ったことを知っているが、エマには言わなかった。

実際、基地に帰ってきてからグレイにはまだ会っていない。

早々にこんな事が起こるとは…。

グレイの心情を思うと末恐ろしくなった。





5日目、エマの傷の抜糸が終わった。

「これでもう東棟に戻れるよ。ステラたちが心配してたから、すぐに行ってやりなよ。」

「うん!」

幸い、心の傷は大きくなかったようだ。

エマは元気に走り出した。



「ステラ!」

昼休憩で大量のパンをたいらげている彼女に声をかけると、泣きそうな笑顔で迎えてくれた。

「エマ~!もう大丈夫なのっ?ねぇ、傷は平気?!」

「大丈夫。明日から訓練にも出る。」

「痛くない?」

「うん。」

「今日は久しぶりに一緒に湯浴みできるね。あぁ、無事で良かった。」



ステラは午後の訓練へ出かけて行った。

エマは自分ももう動けるのに…と思ったが、オリバーの言いつけどおり今日は行かないことにした。



北棟まで走ると、5日間の運動不足で少し息が切れる。

「ふぅ…っ」

グレイの部屋をノックするが、応答がない。


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