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神の口笛

第1章 1




厩舎に着いた。

東ブロック勢は整列を始めているが、エマはまだ来ない。

どうせまた最後に現れるんだろう。

朝が苦手なのも昔から変わらない。仕方ない奴だ。



予想通りエマは最後に現れ、マルコスに怒鳴られて仏頂面だ。

日頃からマルコスは気に食わないのでちょっといい気味だが、遅刻はいただけない。こりゃあまた説教だな…。



「礼!!!」

「「「はっ!!」」」

一斉に掛け声が上がり、同時に全員が敬礼の姿勢をとる。

そして基地内の中央にそびえる御神木に向き直り、深くお辞儀をしながら祈りの言葉を口にする。

ぎらぎらと激しい太陽に照らされ、戦闘ブーツに施された蛇のマークが光った。


あらゆるものに神が宿っているというのがクベナの教えだが、中でも蛇はとくに神聖な生き物とされ、教団のトレードマークにもなっているのだ。

いかなる理由でも蛇を殺生することは禁じられており、蛇に噛みつかれる事があればそれは神の怒りだとされている。


決して蛇だけを崇めているわけではないのだが、反クベナからは「ヘビ公」なんて呼ばれることもある。



祈りの言葉を終え、東ブロック勢がいくつかのグループになって分かれていく。

グレイはエマのグループを率い、馬を連れに厩舎へ入った。


「また寝坊したろ」

「してないよ。ギリ」

「…。夜更かしでもしたか」

小さな声で喋りながら、今日使う馬の手綱を引く。


「昨晩は8時には寝てたんですよ、エマは」

面白そうにステラが言った。


それを聞いてグレイは小さな溜め息をつき、訓練が終わったら北ブロックに来いと低い声で言いながらエマをじろりと見た。


「はぁい…」


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