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神の口笛

第1章 1




「また説教だよ。あぁ、いやだいやだ…」

「ふふっ。いやだなんて言ったらグレイさんのファンに刺されるぞ?ま、説教は勘弁だけどネ」


グレイは男女問わず誰に対しても非常に厳しいので、疎まれることも多い。

しかし見てくれだけは良いため、黙っていれば素敵なのに…と女たちは口を揃えるのだ。





その日の乗馬訓練も、やっぱりうまくいかなかった。

「肩に力入れすぎだ。」

「跳ね上がりすぎ。もっと体幹を使え。」

「本当に毎日筋トレしてるのか?姿勢が頼りないぞ」



さんざん叱られ、やっと訓練が終わる頃には日が沈みかけ、お腹からは大きな音がした。

「疲れた…お腹空いた…ねむい…疲れた…」

一緒に歩くステラには疲れた様子などまったくない。

「暑かったねぇ。早く葉の季節が来ないかなぁ。汗だくだよ」

「葉の季節が来たら大祭りだ!楽しみ。」


クベナの教えに基づき、大祭りと呼ばれる行事が年に2度ある。

防衛が薄くならぬよう、基地ごとに時期をずらしながら開催される。

このガルダン基地での大祭りでは別の基地の者が周囲を防衛し、また違う基地で大祭りがあればエマやグレイたちが防衛に駆り出されるというわけだ。



「エマは葡萄酒に目がないもんね」

普段、飲酒はご法度とされているクベナだが、大祭りの時だけは別だ。

町からたくさんの物資が届き、豪華な食事とおいしい葡萄酒が飲める。


「それを楽しみに生きてる!」

「またそんな大げさな。」

「本当だって!」

大浴場へ向かいながら、今年の葡萄酒はどんなだろうと思いを馳せた。







グレイは夕食を終え、祈りの儀式をする。

今日も争い事なく1日を終えられそうだ。

前回の抗争からもうすぐ1年…。安泰を願い、平穏に感謝する。


大浴場では大勢の男たちが湯あみをしていた。

グレイも皆と同じように風呂に浸かり、今日の疲れを癒す。

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