神の口笛
第4章 4
「今回は何日くらい?」
「おそらく1週間だな。」
「ふぅん…。」
「さ、横になれ。新しい本、読むか?」
「うん!」
…
"悪さをした者が地獄に堕ちるが、ふたたび這い上がって世界征服する"
今夜読まれた本は、皮肉にもそんなものだった。
「そろそろ寝ないと明日から復帰だろう。消すぞ。」
「マルコスはどうなった」
ランプに手をかけたグレイに問う。
「……お前は知らなくていい。」
グレイの鋭い目線が壁を刺した。
エマは背筋が冷えるのを感じ、次の瞬間に灯りは消えた。
「傷は痛むか。」
「平気」
「顔をぶたれたと聞いた。」
「うん。口の中が血まみれになった。ここも切れた。」
「…どこだ?」
暗闇の中で、グレイの指先が顔に触れる。
「ここ。」
唇の端へ誘導すると、グレイはそっと撫でた。
いたずらでその指先をぺろっと舐める。
「…早く寝ろ。」
また今夜も胸を心地よく叩かれ、エマは深く眠った。
…
合宿当日の朝
ランダムに組まれたグループに分かれるため、ステラとは別の隊に交じってひたすら歩いているエマ。
あとどれくらい歩くだろう。
近くにはステラもグレイも、ルイもいない。
重い荷物を背負って歩くには、いくら兵隊でもやはり女にはつらい。
各グループの女兵士たちは、負けじと平気そうな顔をして足を進めていく。
馬も連れているが、ここでは歩くのも訓練のうちなのだ。
3時間以上も歩き続けるとやっとジャングルに入り、先頭にいたグレイ率いるチームは既にテントの用意を始めていた。
まずは就寝するために男女それぞれのテント。
そして医療テント、特設の湯浴みテント。
外にはテーブルと椅子が並べられた。
「エマ!」
作業を終わらせたステラが駆け寄ってきた。
今日は訓練はなく、明日からスタートだ。
「久しぶりの合宿だね。頑張ろっと!ケガは問題ない?」
真面目なステラは言葉も行動もポジティブだ。