神の口笛
第4章 4
「うん。まだ消毒はしてもらってるけど」
「そっか。どれ…、うん!だいぶ綺麗になってきたね!」
ステラがエマのシャツを覗き込み、傷を見るとそう言った。
火を焚き上げ、一斉に夕食をとり、全員で祈りの儀式をしたら就寝だ。
エマは女子テントを抜け、肩の消毒をしてもらうため医療テントへ向かった。
「ねぇ、グレイったら……うふふ」
中からソフィアの甘ったるい声が聞こえ、エマはとっさに固まる。
「ソフィア…やめてくれ」
「少しだけ。…ね?私も寂しいのよ。グレイだってご無沙汰なんでしょう?」
「俺は大丈夫だ。兵士ならいくらでもいる。相手をしたい者も多いだろう。」
「だぁめ。グレイにしてもらいたいのぉ。」
「…――――」
「…――」
テントの隙間から中を覗くと、ベッドの上に寝そべるグレイが見えた。
そのわきではソフィアが大きな胸を寄せ上げ、キスする勢いでグレイに近づいている。
「ねぇ、触って?」
「遠慮する。」
「グレイ~、お願い」
「それよりもう良いだろう?」
グレイが上半身を起こす。
「…ソフィア。」
エマは胸がドキドキと大きく鳴るのを感じながら、勢い任せに声を出す。
ハッと気付いたソフィアがこちらを向き、「あら、エマ。消毒ね♪こっちいらっしゃい」といつもの調子で言った。
椅子に座って肩を消毒される姿を、なぜかグレイも一緒に見ていた。
「はい、これでよし!そろそろ消毒は大丈夫だけど、念のためまた明日も来てね。」
「分かった。」
頷いて席を立つと、グレイも一緒にテントを出るようだった。
「グレイ、行っちゃうのぉ?」
「エマを送って、俺ももう寝る。」
「んもう。つれないのね。分かったわ!おやすみなさい♪ふふ」
2人で女子テントに向けて歩き出す。
「自分で行ける。」
「いいんだ。すぐそこだから俺も行く。」
「ケガしたの?」
「ジャングルの蜘蛛が服に入ったんだ。でも問題ない。」