神の口笛
第4章 4
「…。」
「…。」
「ソフィアとSEXしたことある?」
「ない。」
「ふうん…キスは?」
「ずっと前に、不意打ちで一度されたな。…なぜそんなことを聞く?」
「べつに…。」
「ソフィアはいつもああだ。気にすることない。」
「気にしてない。」
…
「グレイさんは来るもの拒んで、去るものも追わずってかんじだよね。」
すっぽりと寝袋に入ったステラが言った。
「でも一度はキスしたって」
「不意打ちでしょ?ソフィアなら大いにあり得る。」
「…。」
「嫌なの?」
「よく分からない。」
「やきもち、ジェラシー、嫉妬…」
「何??」
「自分の好きな人を取られたりして、モヤモヤする事…かなぁ?」
「ふぅん…」
「あとは、取られたくない!私だけを見て!っていうのが独占欲。」
「難しい」
それで言うと自分には嫉妬も独占欲も確実に存在することが分かる。
大人になっていくと色々な言葉があるのだなぁとエマは思った。
しかしその感情をエマがグレイに向ける事は、なにか間違っているんじゃないか?という根拠のない不安もあった。
私たちは、兄妹だから…?
…
翌日からの訓練は、基地にいる時とはまた違った厳しい内容だった。
今日1日は全員が絶食しなければならないし、その上で何キロも走ったり、チーム同士で対戦もする。
ビアンカは相変わらずエマを敵対視していて、対戦訓練では一目散にエマを攻撃しに来た。
本来エマは通信部隊なので実戦では戦闘に加わることがほとんどないが、それでもやはり兵士は兵士。鍛錬に余念はない。
夜、すっかり疲労困憊の兵士たちは、土の汚れと日焼けで真っ黒だ。
「飯も食えねぇし、湯浴みでもして寝るか。」
ジャングル内の湖畔には男兵士用の仮設湯浴み場が用意されている。
女兵士にもあるが、それは周りから見えぬようビニールシートがかけられたこぢんまりとした場所だった。