神の口笛
第4章 4
「ムラムラ?」
「うん。」
「何言い出すんだよぅ…。最近ちょっとおかしいよ、エマ?」
「そうかな?」
「なんでそんなこと気になる?」
「男はどんな時に、どんな相手とSEXしたくなるのか知りたい。」
「エマは男にSEXしたいと思われたいの?」
「そう…じゃないけど…。」
「…。」
ルイは最近のエマの言動が不可解なので考えていた。
ステラに釘を刺さねばならないな…。
「胸が大きくて、尻も大きくて、せくしい、な女だとムラムラする?」
「…あのねぇエマ。またステラになんか吹き込まれただろ。」
「教わったんだ。」
「…。エマは素敵な女性だよ。胸とか尻で決める男も、そりゃあいるけど…。」
「ルイはなにで決める?」
「………僕はエマが好きだ。」
「…? 私だってルイが好きだよ。」
その”好き”が、自分の言うそれとは違う意味だとルイはよく分かっている。
「キス、してみる?」
ルイはいたずらに言った。
「え?」
「どんな感じか知りたいんだろ?」
「う、うん…。」
「エマ…」
焚き上げた炎の灯りが遠くから少しだけ届く。
ルイは優しくエマを抱きしめた。
「ルイ…?」
不安になってエマが呼ぶ。
身体を離し、ルイの顔が近づく…
青い瞳がまっすぐにエマを見つめていた。
――「なにをしている?」
いつからそこにいたのか、仁王立ちのグレイが厳しい目つきで見ていた。
「あ、グレイ…。なぁんだよ、見られてたのか」
おちゃらけるようにルイが言う。
「東棟リーダーのお前が、人前で女と戯れるとはけしからんな。」
笑っているのに冷たいグレイの表情に、エマは小さな恐怖を覚えた。
「悪かったよ。基地に帰るまでが訓練…だからな。へいへい、俺は退散しますよ~。エマ、おやすみ。」
「おやすみ…。」