神の口笛
第4章 4
疲れた足取りでテントに戻っていくルイを見送り、なんとなく気まずい雰囲気が漂う。
「ルイとキスがしたかったか。」
沈黙を破ったのはグレイだった。
「したことないから、分からない。」
「…そうか。」
誰となにをするかなんて、エマの自由だ。
分かっていても、拒みたい自分がいる…。グレイはもどかしくて唇を噛んだ。
「私がルイとキスしたら嫌なの?」
「どうかな。」
「ふぅん…。」
「自由性交が認められてはいるが、誰とでも戯れればいいという事でもない。」
「でもみんな、そうしてる」
「まぁな…。」
エマは、どうして男のムラムラについて知りたくなったのか自分が分からなくなった。
一方グレイも、エマになにをどうして教えてやればいいのか分からずにいた。
…
合宿が終了し、基地へ帰ってきた。
駆り出されていた兵士は休養のため2日間は訓練がなく、点呼にさえ出席すればあとは自由時間となる。
死んだように寝続ける者もいれば、朝から晩まで男女の行為にふける者もいる。
グレイやルイは幹部のため完全な休みとはいかず、それぞれが多少の仕事をこなしていた。
「ステラ。走りに行こう」
「えぇ~?珍しい事もあるもんだ。まぁ暇だし、付き合うけど。」
「体がなまるのが嫌だ。」
2人は軍服に着替え、棟の外へ出た。
なんでもめんどくさがるエマが、こんなに積極的に自主トレーニングをするなんて、これまでになかった事だ。
ステラは内心驚きつつ、これはビアンカの影響だなぁと察した。
結局その日は午前中に20キロ走り、午後は筋力トレーニングで汗を流した。
「なんか…休養日ってカンジ、全然ない~!」
ステラが嘆く。
いくら真面目なステラでも、合宿訓練の疲れを癒すのに少しは休みたいようだ。
「付き合ってくれてありがとう。明日は1人で行く」
「明日もするの?!はぁ…恐ろしい~…」