神の口笛
第1章 1
脱衣所を出るといつものように女たちが廊下に並び、風呂から出てきた男に声をかけたりしている。
それぞれのブロックに所属する200人の兵士のうち、女兵士はだいたい30人ほどの割合を占める。
男女の性交にクベナとしての規則はなく、防衛軍としても自由性交が認められているため、夜になるとこうして相手を見繕ったりするのだ。
男から誘う事もなくはないが、いつしか女兵士の権限が強くなった。
「どうせ誘ってもフラれるもんよ~」
今日も男兵士は嘆く。
選ぶ権利は女にある…という風潮だ。
ただ、性的欲求の不満は防衛力にも影響があるとされるため、各ブロックには慰安婦も配置されている。
誰でも慰めてもらうことができるが、順番待ちになることも多いらしい。
幸か不幸か、グレイは慰安婦部屋に行ったことがない。
男としての欲求がないわけではないが、相手の顔も知らないのでどうにも気が進まないのだ。
「あ!グレイさん!」
「あぁ、お疲れ…」
「今夜…よかったらお部屋に行きたいなって…」
「これからちょっと予定があって。悪いな」
「そうですか…じゃあ、また」
風呂上がりの女兵士は残念そうにしたが、グレイが去っても同じ場所に立って今夜の相手を見繕っているようだった。
防衛軍に入った当初は、女の誘いに乗ることもあった。
実際性的欲求は満たされるし、後腐れがなく、楽ではあった。
しかし2年経つとエマが軍入りしてきたので、世話を焼いているうちにいつしかそういう行為から遠ざかってしまった。
コンコンと扉を叩く音がして、「グレイ」と声が聞こえた。
「入れ。」
すぐにエマが入ってきた。
慣れた様子でベッドにダイブし、「やっぱりいいなぁ、1人部屋~」と羨んでいる。
「お前ももう少し偉くなればもらえるだろう。」
「なれないよ。女には厳しいもん。それにマルコスは私を目の敵にしてるし。」
「お前が生意気だからだろ?…それより髪が濡れてる。風邪ひいても知らんぞ。」
「だって、早く来なきゃグレイ怒るじゃん」
こっちへ来いと手招きする。
エマはすぐにベッドからこちらへやって来て、グレイのあぐらの中に尻を沈めた。