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神の口笛

第6章 6



南の地へは、馬車に揺られて2時間ほどで着いた。

「基地からそんなに遠くない場所で良かった」

エマが思わずつぶやく。

「なーにー?もう帰りのこと考えてるなんて。」

ステラは呆れたように少し笑った。

しかしその笑みに余裕はなく、久しぶりの戦闘に緊張しているのが伝わる。



先に到着していた特攻騎馬隊は、相手の火薬攻撃に苦戦を強いられていた。

既に怪我をしている兵士や馬もいる。

「医療班!こっちだ!急いでくれ!」

エマたちの乗っていた大型の馬車を見ると、1人の兵士がそう叫ぶ。

同乗していたオリバーが一目散に走り出し、エマたち兵士もぞくぞくと馬車を降りた。


南の基地の防壁はところどころが崩れ落ち、相手の戦力が上回っているのが見て取れた。







―――その夜。

激しい攻防戦が日の入りと共に少し落ち着き、兵士たちは交代で休息を取る。

古びた宿舎の中、エマは流れ矢でケガをした左腕をオリバーに治療されていた。

「傷が深くなくて良かった。大丈夫?エマ。」

「うん、平気。」

「エマは強くなったね。でも無理はいけないよ。」

「分かってる。」

もし傷が深かったら、しばらく弓矢を扱えなかっただろう。

もっと冷静に、もっと集中しなければ…。

私が軍にいる一番の意義は、弓矢の技術と視力にあるのだから。







翌日、何度も火炎ビンを投げ込まれ、ボウガンからは太くて強靭な矢が放たれた。

苦戦しつつも、なんとか日の入りまで持ちこたえた。

しかし負傷者は多く、敗北まで時間の問題かもしれないと誰もが思い始める。



エマは少ないながらも配給された食料をかじり、空を見上げた。

グレイ…。

もうそろそろ、ガルダン基地に戻ってきているだろう。

死者は無し!という報告がエマを大きく安心させていた。



人間がこんなになって戦闘を繰り広げる中、星たちは変わらず美しく瞬いている。


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