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神の口笛

第6章 6



さらに翌日、各基地から応援部隊がこちらへ向かっていると通達があった。

ガルダンから、騎馬隊は来るだろうか。

考えに浸っている余裕もなく、今日も火炎ビンが投げ込まれ、それが開始の合図かのように戦闘が始まる。


その日のエマは調子が良かった。視力も、いつもよりさらに冴え渡っている気がする。


小ぶりな岩の裏側から相手を狙い撃つ。


少し離れた場所ではビアンカも戦っていたが、今はライバル視していられる状況ではない。

ただひたすらに、弓を放った。




――太陽が真上にのぼった。

思わず、エマは天を仰いだ。

瞬間、ボウガンの矢が太ももの肉をえぐった。


何が起こったか分からず目をやると、ドクドクと赤黒い血液が流れ出ている。

それからやっと痛みが襲ってきた。


「痛っ…――」


止血を試みるも、うまくいかない。


エマに影がかかり、見上げるとビアンカが立っていた。


助けに来てくれたのかと思ったのも束の間、ビアンカは大きく負傷したエマの太ももを踏みつけて言った。

「油断してるからこんな事になるんだよ。本当、いつも鈍くさいよね。笑える。」

「い…痛い…っ!」


ほくそ笑むビアンカを睨みつけたその時、地響きのような轟音がどんどんと近づいてきた。


ヒヒン、と何頭もの馬の鳴き声が響き渡り、2人はとっさにそちらを見やった。


…グレイたちが来たんだ。


騎馬隊は火炎ビンの攻撃を避けながら、あっという間に相手の陣地に侵略していった。

馬を持たない敵陣が、その迫力に恐れおののいているのが見える。







「大丈夫か?」

「うん。」

ガルダンへ戻る馬車に揺られながら、少しやつれたグレイが、包帯を巻かれたエマの太ももを撫でる。

今もまだドクンドクンと傷口が疼くが、それより互いに生きてまた会えたことが嬉しかった。


「グレイ。北の地はどうだった。」

優秀な兵士が派遣されても、鎮火まで10日間もかかったことを考えれば、大きな戦闘だったのは明白だ。

「死者が出なかったのが奇跡だ。皆、日々の訓練のおかげだな。」

「そっか…。」

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