神の口笛
第6章 6
おそらくあまり意味がわかっていないエマに対し、グレイは必死に理性を保とうと耐えた。
エマの熱を吸い取ってやるように包み込み、背中をポンポンと優しく叩く。
「ねえ…グレイ…」
見上げてくるエマの表情を見れば、キスをねだっているのが一目で分かる。
「…今か?」
「今は駄目なの?」
「いや…。」
2週間近くも離れていたエマにキスがしたかったのは、グレイも同じだった。
ゆっくり丁寧に口づけ、舌を差し込む。
エマの熱い口内で、なめらかに舌が絡み合った。
「はぁ…っ」
一度唇を離すと、熱に浮かされたエマがとろりとした表情でさらにキスをねだった。
欲情しているように見えるエマの姿に、グレイの息も上がる。
キスを重ねるうち、だんだんとエマの体が硬直してくるのが分かった。
「グレィ……ん…はぁ…っ…」
唇の間から漏れる淫靡な吐息があり、次の瞬間、エマの体は何度か大きく痙攣し、ふるふると小刻みに震えた。
グレイは呼吸が整うまでエマの胸元を叩き、いつしか2人とも眠りに落ちた。
「なぁんだ、そういう事だったの?言ってくれればいいのに…ふふ。」
すやすや眠る2人をソフィアが目撃し、微笑みながらつぶやいた。
初めて見るグレイの寝顔に新鮮な思いを抱きつつ、エマをしっかりと包み込むその姿に少し羨ましくもなった。
ずっと兄妹同然だと思って接してきた2人だが、もしかしたら…。
ソフィアは次の身体検査が待ち遠しくなった。
…
その夜、東棟ではステラとルイが共に食事を取っていた。
「エマは無垢すぎる。」
「そこが良いんだよ!」
「あはは!分かる。まぁエマは恋愛とかよく分かってないけど、自分の気持ちや欲には忠実だよ。」
ミートボールを2つも頬張りながらステラが言った。
「…つまり?」
ルイが聞くと、ステラは”これを飲み込むまで待って”と手で合図した。
「…グレイさんの存在が大きすぎるってこと。エマを手に入れるのは相当むずかしいよ?」
「はは、そうだね。うん…分かってる。」
それが兄弟愛なのか否か、ステラとルイには確信が持てなかった。
それでも、あの2人の絆が相当に強いことは分かる。