神の口笛
第6章 6
「グレイさんって厳しいけど、訓練が終わってエマを呼びに来る一瞬だけは柔らかい表情する。」
「エマには甘いからなぁ。」
「妹的な存在だから?」
「う、うん…。」
「そう…だよね。私最初、絶対あの2人やることやってると思ってたのね。でもエマがヴァージンって聞いて、超びっくりしたっけ。」
「俺は、エマがヴァージンって分かってたけどね?」
「なんで?」
「勘。」
「…ぷぷっ!」
「なんだよ!」
「ううん。あはは。…でも案外、知らない間にヴァージン卒業しちゃってるかもよ。エマだってもう22になるんだから」
「それはないよ…。たぶん…。」
ルイは顔を曇らせた。
エマが誰かとSEXをするなど想像がつかないし、そこが良くもあるのだが、もし仮にするとしたら…相手は1人しか浮かんでこない。
しかし、いや、そんなまさか。ありえっこない。
合宿では、キスをしてみたいとエマは言った。
キスさえした事がない彼女に手を出すなど、あの男がするとは思えない。
ブンブンと頭を振り、自室へ戻った。
…
数日後、エマはテオヌのため”弥生の小屋”へ入った。
「エマ、体調はどう?変わりない?」
待っていましたと言わんばかりにソフィアが迎える。
「なんともないよ。ケガも良くなってきた。」
「そう、良かった♪それじゃ問診するわね」
「…また?」
身体検査は年に一度、葉の季節にあるはずだ。
「ほら、葉の季節は大祭りもあるしバタバタするでしょう?ちょっと早いけど…先に、ね?」
グレイとの情事があるのならいち早く知りたいという思惑だが、ソフィアはバレないよう応えた。
「分かった。」
幸い、エマは何の疑問も抱いていないようだ。
いくつかの質問のあと、満を持してソフィアは聞いた。
「性交渉の有無。…どう?」
エマは特に表情を変えることなく、首を横に振った。
「ないの?」
「うん。」
「本当に?」
「ないよ。」
「そう…。」
期待外れと言うべきか、思った通りと言うべきか…。