神の口笛
第6章 6
「今でも軍人でなければ、愛する者同士が結婚する事もあるってステラが言ってた。ステラの両親がそうだって。」
唐突にエマが喋り出すので、ソフィアは優しく答える。
「そうね。かなり少数派になってきたけど…いる事は、いるわ。」
「ふぅん…。」
「どうして気になるの?」
「…。私は…。」
「うん?」
ゆっくりでいいのよ、とソフィアは言い、エマの背中をさすった。
「私は、愛した人と結婚がしたい。愛していない人との結婚なんて嫌だ。…それは難しいの?」
「そんなことないわっ!もちろん、愛し合っている2人が結婚するのは素敵な事よ。ただ、愛するという習慣や文化が薄れているのは事実。」
「うん…」
「エマは愛する人がいるの?」
「どういうのか、分からないから…。」
「そっか。…そういう時はね、誰とキスしたいかな~?って考えるのが近道よ。」
「キス?」
「そ。性欲が湧くとSEXしたくなるけど、キスは愛情から来る事が多いから。私だってたまにはSEXするけど、キスはなかなか気が向かないの。分かる?」
「うぅん…。キスはしたいと思ったし、もう、した。」
ソフィアは目をまん丸にして驚き、少しの間かたまっていた。
「初めてのキス…よね?」
「うん。グレイと、した。何度か。」
根掘り葉掘り聞く前に、エマの方からそう伝えられる。
予想していた相手ではあったものの、実際耳にするとどこか信じがたい事実だった。
だって、あの純真無垢なエマが…。
「そうだったのね。それで、グレイはあなたになにか嫌なことはしない?無理強いされてないわよね?」
「全然。いつも私がせがんで、してもらうの。」
ソフィアにはその光景が容易に浮かび、グレイがエマに溺愛していることを再認識した。
「キスだけ?」
「…そう。」
エマは乳房への愛撫や、キスで果ててしまった件については黙っていた。
「グレイを愛してる?」
「分からない。…でも、すごく大事。」
「うん…。そうよね。」
「私とグレイがキスするのって、変?だめなこと?」
「そんなわけないでしょう。あなたたちは一緒に育った兄妹のようであって、本当は血がつながっていない。れっきとした男と女なのよ。気にすることないわ。SEXしたって誰も文句なんて言えないのよ?」
「…。」