神の口笛
第6章 6
最近ではほぼ毎回ねだってくるエマを思えば、オリバーの言葉にも頷けた。
「だから、愛撫だけでやり過ごそうってのは女性にとっても悶々としちゃう原因なわけ。SEXして初めて、しっかり芯まで満足できるんだよ、脳がね。」
「…なるほど。」
「エマが我慢できなくなってほかの男とSEXしちゃうのが嫌なら、ちゃ~んと満足させてあげなよ。」
楽し気に手を振ってオリバーが去っていった。
「…。あいつは、そんな事しない。」
「……しないさ…。」
グレイはつぶやき、自分も北棟へ帰った。
…
テオヌが明けた日、グレイとエマはそろって農地へ足を運んだ。
戦の間も農夫が見ておいてくれたおかげで、トマトは立派に育った。
中でも大きくて真っ赤に染まった果実をもぎり、2人は分け合って食べた。
農夫たちが皆、微笑ましく見つめていた。
「最後のひとつは食べずにそのままにしておいて、種を取ればまた植えられますよ」
エマには夢のような話だった。
農夫の提案通り、葉の季節が来たらまたトマトの種を蒔くことにした。
「明日からまた訓練だな。平気か?」
戦が終わってから熱を出し、すぐにテオヌになったエマは最近ろくに訓練が出来ていない。
「大丈夫。早く体を動かしたい。」
「そうか。無理するなよ。」
しかしすぐに、明日は乗馬の訓練だと思い出し、エマはおそるおそるグレイを見た。
「なんだ?」
「ううん。…明日、乗馬だったなぁって。」
「ふふっ。心配か?」
「というか、グレイに怒られるのが怖い。」
「まぁ訓練だからそれは仕方ない。勘弁しろ。」
「はぁい…。」
きっとまた怒られるだろう。
でも、戦がなく平常通りの訓練ができるのは平和の証でもある。