神の口笛
第7章 7
湯浴みを終え、部屋に戻ってからエマはすかさず聞く。
「クリトリスってなに?」
「あ〜、絶対くると思った。それはね…いつかエマが誰かとSEXしたら、その相手に教えてもらって。」
「今じゃ駄目なの?」
「女同士でクリトリスの場所おしえっこするなんて趣味、私には無いのっ。」
「…???」
「それよりエマ、もうすぐ火の季節だよ。今のうちに夏服だしておこうよ」
「うん。」
極寒の白の季節から、突然猛暑の火の季節になるのはデワトワ国特有の気候だ。
この日、2人はクロゼットから夏服を引っ張り出し、ベッドの下にていねいに敷いて挟んだ。
こうしてシワをのばすのが一般的なのだ。
そして、火の季節といえば大祭りがある。
火の季節と葉の季節の初めには大祭りがあるが、白の季節はなにもなくて退屈だ。
「やっと葡萄酒が飲める。」
「あはは!今度のも美味しいといいね。」
その日に思いを馳せつつ、エマは眠りについた。
窓の外で激しく降り続いていた雪は、やがて弱まっていった。
…
1週間後…――
「…暑っつ…!」
向こうのベッドでステラが起き上がり、冬用の掛け布団をバサッとどけた。
火の季節が来たのだ。
エマも目覚め、全身に汗がにじんでいるのを感じた。
火の季節へと変わって数日は、積もっていた雪が解けて基地内はぐっしょりと湿る。
そのため兵士たちはT字になった道具で水を掻いたり、残った雪を踏んで溶かしたりする作業に追われる。
「はあっ……お腹空いた。」
昼まで休みなく作業し、疲れ果てて東棟へ向かう。
「普段使わない筋肉使うし、腰もいたいよね…毎年。」
ステラはドスドスと自分の背中を叩きながら言った。