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神の口笛

第7章 7


「あ!ラグマンだ!」

今日の昼食はラグマンという麺料理で、よく冷やされているそれが火の季節が来たのだと皆に知らせている。

具はパプリカでなくトマトが良かったな…と思いつつも、エマはちゅるちゅると麺をすすった。


「もうすぐ火の大祭りかぁ。1年早かったなぁ。」

空中を見つめながらステラが言う。


葉の季節の大祭りには本神様を祀り、葡萄酒で宴をして朝を迎え、日の出と共に祈りの儀式をする。

しかし火の大祭りは1年の始まりという事もあり、少し特別な行事もあるのだ。

神職者がたくさんやってきて聖水をふりまいたり、火渡りの儀式があったり、葉の季節よりもなにかとやることが多い。

それでも葡萄酒とチーズが堪能できることを思えば、エマには少しも煩わしくない。









数日後、例年通り男たちが本神様を担いでやってきて御神木のとなりにドスンと祀った。


「いよいよ明日は火の大祭りだな。」

皆準備に勤しむ中、少しだけグレイと言葉を交わす。

「うん。グレイは朝からお祈りでしょ?」

それぞれの棟や部隊の幹部は、朝から祈りの儀式に出席しなければならない。

聖水も、そのときにお清めされるのだ。

「ああ。お前は?」

「朝から葡萄酒を飲む。」

「ふっ。飲みすぎるなよ。」

風で乱れたエマの前髪を優しく直してから、グレイは持ち場へ戻っていった。









大祭り当日、聖水の儀も火渡りも日が暮れてから行われるため、点呼にだけ出るとエマは二度寝した。


昼に起きると部屋にステラの姿は当然ながら無く、エマは急いで白装束をまとう。

棟内にも少しの兵士が行き来するだけだった。


すぐに棟を出ると、御神木のそばでは大掛かりな祈りの儀式が執り行われている。

それぞれの棟の前にたくさんのテーブルや葡萄酒の樽が並んでいて、その中からエマはすぐにステラを見つけた。

「あら、お早いお目覚めで。」

ステラが笑っている。


さっそくバケットとチーズを手に取る。

「エマ、おはよ。葡萄酒飲むだろ?取ってきてあげるよ。」

「あ、ルイ。ありがとう」

「なんでエマだけなのよー?!私のもヨロシク!」

ステラが文句を言うと、ルイは笑いながら葡萄酒を取りに行った。


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