神の口笛
第7章 7
3人で乾杯してすぐ、ステラは細長い木の板を差し出した。
「お焚き上げまでにこれ、書かなきゃ。はい。」
この板に願い事を書き、お焚き上げで一斉に燃やした後で、火渡りの儀があるというわけだ。
皆に配り、まずはルイがテーブルの真ん中に置かれていた万年筆を手に取る。
「俺は毎年同じだから。」
ルイは木の板に”世界平和”、と大きく書き、万年筆をステラに渡した。
「そんな良い子ちゃんなこと書いたって、ホントのところは神様にバレてるよ?こういうのは素直に書かないと。」
「なんだよ、これが本心だし!」
「あははっ」
やがてステラは”良い男が私の虜になるように”と不格好な文字で書いた。
「なんだそれ、ぷぷぅっ…」
ルイはわざとらしく笑ったが、すぐに「まぁ確かに、そういうのもいいな」と変に納得するのでステラもエマも笑った。
「はい次、エマ。」
エマはまだ字を書くのが完璧ではないため、誰かの助けが必要で、それをステラもルイも分かっている。
万年筆を受け取って考えてみたが、エマには決められなかった。
去年は確か、”次の葡萄酒もおいしくできるように”と書いた。
今年は…―――
「思いつかないから、あとで書く。」
結局筆を置き、エマはそう言って木の板をしまった。
…
日が暮れてきた。
エマは用を足そうと一度東棟に戻り、またステラたちの元へ戻る。
「いいじゃねえか~」
棟の物陰で、男の声が聞こえた。
とっさに見るとそこには男兵士3人が、ビアンカを囲んでいる。
「やめて!離して!」
掴まれた手首を引き離そうとビアンカがもがくが、男兵士はビクともしない。
もう一人の男がビアンカを羽交い絞めにし、気色悪い手付きで乳を揉み上げた。
「うん。小ぶりだけど悪くねェな」
「本当はこういうのも好きなんだろ?抱かせろよ。」
ビアンカは体を強張らせながら、それでも強気に「離せ!」と怒鳴った。
皆が宴をしているテーブルとは離れていて、ここは誰も通りそうもない。